サステナブルな旅を広げる新たな認証団体が誕生!TSCAについて紹介

「認証」と「育成」を目的とした新設団体「TSCA」発足

2025年1月27日、グローバルな持続可能性の向上に寄与するための観光産業の「育成」と「認証制度」の向上を目的とした登録団体 「TSCA: Tourism Sustainability Certifications Alliance」が発足されました。

 

TSCAは、持続可能な取り組みの国際的な基準をつくり、その基準を満たした観光産業や施設、政策の認証を広げることで、「サステナブルな旅をしたい」と思う旅行者たちが信頼できる情報を発信することを目的としています。

この団体は、サステナビリティの認証にこれまで携わってきた世界中の機関によって組織されています。たとえば、Responsible Tourism Institutionによって設立された「Biosphere」、「EcoTourism Australia」、ビーチや観光船関連の持続可能性の整備を目的とする「Blue Frag」(日本には、一般社団法人日本ブルーフラッグ協会もあります)、国際環境教育基金(IFF)が定める認証基準にもとづいてホテルやキャンプ等宿泊施設の持続可能性の認証を担う「Green Key」などがパートナーシップを結んでいます。

こうして複数の有力な認証団体が協力体制をとり、よりシンプルで信頼のおける基準をつくろうとしているということで、今後の動きが期待されますね。

観光産業における「統一的基準」や「認証」の難しさ

サステナビリティは世界中のあらゆる産業や機関にて重要な課題となっています。他方で観光産業は、他の産業と比較してサステナビリティの取り組みやその認証制度の整備において後れを取ってきたことが問題視されています。

観光産業は旅行会社や宿泊産業、飲食、交通、地域、教育、広告、印刷、などなどあらゆる産業・業界が複雑に関わり合って構成されています。そのため、各産業ごとにサステナビリティへの取り組みに温度差が生じてしまったり、単一の基準では産業の多様性をカバーできないという問題が生じたりしている現状があるのです。宿泊産業の基準を飲食業にそのまま当てはめることは難しいですよね。そのため、産業ごとに異なる基準やルールを設けざるを得ず、結果的に基準やルールがたくさん生まれてしまいます。実際に旅行する旅行者側からみれば「どの基準を参考にすればいいのかわからない」「基準や認証制度が多すぎる」と思ってしまうこともあるでしょう。

そのため、複合的な産業を包括的にカバーするような基準や認証制度が長らく追求されてきました。とくに、旅行者からみてよりシンプルでわかりやすく、なおかつ信頼することのできる認証制度や情報発信が求められてきました。

グリーンウォッシュの問題

旅行者から見た情報や基準の信頼性という点でキーワードとなるのが「ウォッシュ」の問題です。

ウォッシュとは、とても単純化すれば、みせかけだけの「サステナビリティへの配慮」を広告にして、売り上げを上げようとすることを指します。実際にどのようにサステナビリティに貢献するのか、どのような効果や地球環境への配慮があるのかが不透明であるのに、「サステナブル」と打ち出し商品を売ろうとする会社や産業が後を絶ちません。

TSCAは、そうした「ウォッシュ」の問題に対処することも目的として強調しています。

TSCAの会長であるエリッサー・キーナン氏は、団体設立の目的を次のように説明しています。

私たち観光業界と旅行者は、持続可能な観光を促進し、グリーンウォッシングを排除するために、信頼できる透明な認証システムを求めています。TSCAは、観光業界のための協力的な認証プラットフォームとして、また旅行者が信頼できる持続可能性の基準に基づいて十分な情報を得た上で選択できるようにするために設立されました。

このように、シンプルで信頼のおける基準を明確化することで、「ウォッシュ」に立ち向かうとともに、「サステナブルな旅」をしたいと思う旅行者がより便利に旅行ができるようになることを目指しているということですね。また、その認証基準に準拠しようとする観光産業側にとっても利用しやすくわかりやすい基準である必要があります。

なお、TSCAはすでに世界19,000以上の観光関連の認証団体とタッグを組み、一貫性のある認証基準の設定に向けて歩みを進めているそうです。TSCAは、「持続可能性の基準と基準について調和を図り、コンセンサスを得ること」、そして「観光業界にとって国際的に認められた共通の基準と言語を作ること」を目指し、「企業や組織の持続可能な経営とその継続的な改善を認証すること」をミッションに掲げています。

認証制度について関心をもってみよう

世界的に、よりサステナブルな観光産業のありかたが模索されていますね。私たち旅人の側も、こうした「認証制度」や「基準」が存在していることについて知識を深めていくことは大切だと思われます。これから泊まろうとしている宿泊施設はどのようなサステナビリティ認証基準に準じているのか、これから訪れる観光施設はどのような取り組みをしているのか。そういったことは、旅行者自身でインターネット等で調べてみなければなかなかリーチできない情報かもしれません。

旅行に行く前に、あるいは計画中に、サステナビリティに関する地域や企業の取り組みをチェックしてみると、より「サステナブルな旅」に近づくことができそうですね。

HP

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